脳障害児 日木流奈君の椅子 (T-016)
「NHKスペシャル」でも放映された、障害を持つお子さんを抱いて座るための椅子を製作致しました。
既存の家具にはない形でも、オーダーだからこそできる、用途に合わせた家具づくりです。
後に2002年4月28日NHKスペシャルで放映されたドキュメンタリー番組「奇跡の詩人〜11歳脳障害児 日木流奈君」のために作った椅子です。
依頼はお世話になっているマッサージの先生からの相談でした。とあるお客様が障害を持つお子さんを抱いて座るための椅子を探しているとのお話でした。その障害児が流奈君です。
お母さんは椅子に座り流奈君を横抱きにし、片方の手で文字盤を持ち、もう片方の手で流奈君の腕を支えながら会話をしておられます。その無理な姿勢のためにお母さんの体には大きな負担が生じていたようです。
そこでまず先生に勧められて流奈君が7・8歳のころに書かれた本を4・5冊買ってきて読んでみました。
ビックリいたしました。大学教授にも匹敵するような文章力です。
椅子の製作を無償でお受けすることにいたしました。
さて椅子を製作するにあたっては、お母様が流奈君と会話をしておられる姿を把握しなければなりません。マッサージの先生のところでその姿をデザイナーと一緒に見せていただくことになりました。
さてその当日ですが、私の頭の中では流奈君が書かれたイメージの姿があり大変緊張をしています。
そんな状況でお母さん・流奈君とお会いをしたのですが、もうすでに会話が始まっていました。
緊張をしている私を気遣ってか、流奈君からは“そんなに緊張しないでください、たかが脳障害児ですから!”でした。
さて製作に当たっては図面に書けない部分などが多くあります。職人さんがおられる旭川で打ち合わせをするためにデザイナーと二人で行くことになりました。
理想の椅子が4ヶ月の後に完成をいたしました。椅子を使われてからお母さんが「この椅子は身体の一部のようです。おかげさまで新しい本が出来上がりました。」と本をプレゼントしてくださいました。
椅子の背もたれにお母さんが背をつけ椅子をまたいで座り、横抱きに流奈君を膝に乗せ、文字盤を使いながら会話をするための椅子です。
番組のエンディングには椅子が大きく映し出されていました。
・デザイナー・千葉信一郎
千葉建築設計事務所代表
・製作者・吉田幸男
技能五輪全国大会第一位
技能五輪世界大会(ベルギー)第三位
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