第234回 2010.06.14
週間日誌233回に引き続き、今回は千葉さんに登場していただきます。
【その2 着工から完成に至るまで。】
M様のマイホーム設計監理を振り返り寄稿させていただきます。
千葉建築設計事務所 千葉 信一郎
2007年12月11日。
Mさんから「ご無沙汰してます」で始まるメールを頂きました。
そこには順調な生活と再びマイホームを建てるという事、そして全面的に設計を任せたいと書いてありました。知って頼んでいただけると言うことは大変な幸せです。
私の事務所ではほとんどの仕事で以前勤めていた高井建築設計研究所と一緒に取り組んでいます。今回もMさんにご了解を頂き共同で進めることになりました。
施主が設計者を指定すると言うことはご自身の思い描くマイホームのイメージははっきりとしているからだと思います。Mさんには明快なこだわりが有りました
それは徹底した使いやすさです。
計画の段階から動線や通路幅、さらにはその場での人の動き方を細かくシュミレーションします。手持ちの物をどう収納するかもリストで確認します。当然新規に購入される家電も決めていきます。
最近の傾向でもありますが住宅設備機器は非常に詳しくキッチンショールームでの打ち合わせでもショールームスタッフよりも詳しいのではと思うほどでした。
土地の選定からお手伝いさせていただき、設計としての最初のプレゼンを2008年3月1日に行い、その年の11月末に設計を完了するまで13回の打ち合わせを行いました。
実施設計の図面としては意匠、構造、設備で80枚となりました。
大半を高井建築設計研究所の長谷川さんが仕上げました。
施工会社は3社の見積もり合わせとなり狛江の米屋建設が請け負うことになりました。
以前もお願いしたことがあり担当の大久保さんが一生懸命打ち込んでいただけるので今回も安心してお願いできました。
2009年4月26日に契約し早々着工となります。
ここから実際に工事が始まるのです。
現場が始まると定例会議と言って現場で現場監督や各業者の現場代理人、または職人と週に一度の割合で打ち合わせを行います。施主にも月に一度は来て下さいとお願いしていまが実際来られる方は少ないですし来られても少し現場を見たら帰られます。
しかし今回のMさんは違いました。毎週来られ積極的に打ち合わせに参加し終わるまでいらっしゃいます。
遅いときは夜の10時を超え、早くても打ち合わせには5,6時間は掛かります。建築の完成引き渡しが12月19日ですから果たして一体何回来られたのか私にとっても初めての経験でした。
定例打ち合わせのある時Mさんが私に「家具の図面はこれから出てくるんでしょ。これで終わりじゃないですよね。ユウキさんが作ってくれるし楽しみにしてますよ。下駄箱なんかもどっか押したらはんこうが出たりするくらいのことが有るんでしょ。」と言われました。
多少はと思っておりましたが、Mさんに引きずられ結局この後家具図31枚を描くことになりました。
そしてMさんの言うように押したらはんこうが出てくる下駄箱も作りました。
「下駄箱はおっしゃるように押したらはんこうが出てきますよ。」と図面を見せたら、「ボールペンも出てこないと」と言うことでボールペンも出るよう考えました。
いつも施主の思いが私の想像を超える物を作らせ鍛えてくれます。
世の中でもこんなものが有るかどうかは知りませんが珍しいことは間違いないでしょう。
私の設計の中にはこのような珍しい物が多いのですが当然ながら描くよりも作る方が大変です。職人の頭の中をいったん白紙にしてもらいその通り作ってもらいます。
工場での勝手なアレンジはダメです。設計を信じて図面通りを作るのです。
工場では「これは千葉さんの設計だよと朝礼で言うのさ」と言ってました。
細かなところで分からないことが有れば直ぐに電話が来ます。作っている最中は朝から夜遅くまでひっきりなしです。結局私が設計し作る過程でもう一度話し合って作っているのと同じですから失敗はまずありません。
この下駄箱も設計図の不備であるはんこうとボールペンを押し出す装置のメンテナンスの為の機構を工場が考えてくれました。ですから図面と実際とはこの部分が違っています。
私が設計した家具の取付はユウキさんの次男である吉文さんにやってもらっております。
もう10年くらいになるかもしれません。どんなに大変でも文句も言わず一生懸命やってくれます。そして何より上手いのです。
ペンケースのステンレスはシノキ工房の篠木さんが担当しました。
この方とも長いつきあいです。金物はほとんど彼が担当です。
この家具は今回初めて作る珍しい物ですが作って下さる方々は日頃から私の設計を理解して下さる方々ばかり。だから一点ものの特注が成功すると思っております。
今回は下駄箱を取り上げましたがその他にもガラスの小口が光るデスクやトイレの手洗いカウンター、ホームシアターの機器収納、ルンバ(自動掃除機)が納まる飾り棚、アイロン台などもう設計したくないほどの家具のオンパレードです。
また機会があれば写真や図面と共にご紹介したいと思います。
こだわりのMさんのお陰で私の腕も少し上がったかもしれません。ありがとうございました。
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